モンゴル族社会

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今日までモンゴルをめぐる諸表象においてはその「遊牧」的な側面が強調されがちであったが、その論が依拠するところは必ずしも現代モンゴル人の実生活ではない。それ故、モンゴル地域を訪れた人の中には、自ら抱いていたモンゴルイメージとその現実とのギャップに唖然とする人が多い。エキゾチックなモンゴルイメージに噛み合わない、「変わってしまった」モンゴル人の方が多いが、中国領内モンゴル族はその典型のひとつである。彼らは一方で世界のモンゴル人口のマジョリティを占めながら、もう一方ではエスニックマイノリティという現実にある。
彼らがおかれる生活空間、そこで構築した社会や文化は一様でも不変でもない。中国領内モンゴル族の代表的居住地である内モンゴル自治区の総人口に対するモンゴル族の割合は十数パーセントまで下降している。

生業の面で、中部や西部など自然環境が農耕に適さない地域においては牧畜業が営まれているものの、モンゴル族人口の密集する東部地域では農耕化が進み、衣食住・言語生活の面でも漢族の影響を受け、「漢化」現象が顕著である。東西を問わず産業構造の変化に伴い、学生や知識人をはじめとするモンゴル族の人々の都市への進出が進み、都市型モンゴル族コミュニティも形成しつつある。
自治区以外のモンゴル族は主に東北と西北地域に分布するが、自治区内の東西差異に近似し、東北モンゴル社会においては「農耕化」と「漢化」が進行するのに対し、西北モンゴル族の多くは牧畜業を営んでいる。だが西北モンゴル族のおかれる政治経済的、社会文化的な状況はその他のモンゴル地域より複雑な様相を呈している。彼らは地域的なマジョリティであるウイグル族・カザフ族・チベット族等に囲まれ、少数民族の中の少数民族である。
このようにして、多様な文化的地理的環境や、異なる民族との相関関係の中で、人々は多種多様な生業を営み、異なる方言ないし言語を操り、異なる地域文化を創出する。

その際、人々のモンゴル人としての自己意識のモデルは必ずしも一様でなく、彼らの認めるモンゴル人らしさの基準点も交渉相手や社会状況の違いによって異なる。しかしながら内モンゴルにしろ、その他の地域にしろ、行政区画こそ異なるものの、それらを包摂する同一国家において皆モンゴル族の名のもとにあり、モンゴル族同士の相互作用が強化される側面もみられる。そういう意味で彼らのいずれも共通に少数民族としてのモンゴル社会を構成し維持しているとも言える。
これらのモンゴル社会は排他的なものでなく相補的なものである。複合社会における伝統文化の維持発展が常に課題となるが、特に現在、西部開発という国家プロジェクトの中で、彼らがどのような形で変動しつつある自然環境、政治環境と折衝し、いかなる社会を再構築していくかは注目すべきものである。

文責:シンジルト(社会学博士)